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「殺しの柳川」が担った政界裏仕事

「日本の朝鮮統治時代について、おっさんは『悲しい時代』というので『でも人口も3倍になり、インフラの整備も進んだ』と反論したこともあった。周囲はイエスマンが多くて、口答えするようなのは自分だけやったかも知れん。あんまりズケズケ言うから、『おい、あんた大丈夫か。あんな口の利き方して』と注意されることもありました。でも、自分くらいしか直言するヤツはおらんと思いあえて言うようにしていた」

 議論をするうちに、柳川は「お前がそんなことを言うな」と腹をたて事務所の二階に上がってしまう。そこで書に没頭し、気を鎮めた。そして朝の5時半頃に電話をかけ、「昨日の話やけど、なんの根拠があってそんなこと言うのか、説明してみい、と言い出すんです」とKは苦笑する。

「人の話を聞く懐の深さはあった。ただし、きちんとディスカッションする相手がおらんかった」

 柳川の気持ちは純粋だとしても、その周囲には元ヤクザに直言する勇気を持つ者が少ない。当然、柳川の思考は独りよがりのものになる。

 その発言が物議をかもしたこともあった。1982年8月15日に放送された大阪の朝日放送の番組で、インタビューに応じた柳川は、天皇の戦争責任について言及した。この年6月、歴史教科書の検定をめぐり、日本軍が「華北に『侵略』」とされていた表現を「華北に『進出』」と改めるよう文部省が求めたとの報道を機に、中国や韓国との外交問題にまで発展した。いわゆる第一次教科書問題である。これと同時に天皇の戦争責任を問う声が高まっていた。

 この番組で「戦争責任問題を韓国人の立場でどう考えるか」と問われ、柳川はこう答えた。

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