国内

「殺しの柳川」が担った政界裏仕事

 柳川は1983年に政治団体を東京に立ち上げる。土曜会という。「日民同のような団体をつくりたい」との考えからだった。

 松本明重が率いた日民同のように、歴史や思想の学習を重んじる政治運動を展開するために立ち上げられた土曜会の実務を取り仕切ったのは、望月丈二だった。自民党の代議士を父に持ち、元首相の福田赳夫の私設秘書をしていた。福田率いる清和会といえば、自民党内で親韓派の牙城と目されていた。

 月に一度、土曜に政治家を招いて朝食会を開いていた。当初の参加メンバーは、清和会をはじめとする錚々たる政治家が並んだ。

「政治家とパイプを作り日韓関係に役立てようとの考えもあったんやけど……」と口籠もりながら、Kは続けた。

「政治家は金の入った折り箱を持って帰るだけで、すぐに政治家本人ではなく秘書が顔を出すようになってしまった。結局は関東のヤクザの大親分と10万円もするような高いワインを飲むだけの会と化してしまった。おっさんがこういう会をやったところで、どうしてもアウトローに流れてしまうんや」

 この頃の柳川を知るのが荒井アンドアソシエイツ代表で、政界フィクサーとしても知られる荒井三ノ進だ。

「柳川さんは私のことを“三ちゃん”とよび可愛がってくれ、私も柳川さんに頼みごとをすることがあった」

 と荒井は言い、柳川から贈られた直筆の般若心経の写経を見せてくれた。荒井は、中曽根康弘の秘書でもあり、中曽根派の「裏仕事」を担うことも多かった。

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