国内

「殺しの柳川」が担った政界裏仕事

戦後の日韓裏面史をルポ(アフロ)

「柳川組」初代組長である柳川次郎は日本を愛し、また祖国の韓国との架け橋になろうとした。だから政治にも近づいた。しかし、柳川に持ち込まれるのは裏仕事ばかりだった。柳川を頼る多くの人間が求めたのは、「殺しの柳川」として恐れられた柳川の“威”である。国のために尽くす“義”ではなかった。連載第4回は、柳川の心の遍歴を辿る。(著・竹中明洋)

 * * *
 10月だというのに、真夏のような日差しに汗が噴き出してくる。高台の頂上まで階段を登り切ると、びっしりと根を張ったガジュマルの木の下に石碑が建っていた。

 県知事選挙が終わり、政治の季節が過ぎようとしていた沖縄で、宜野湾市の嘉数の高台を訪ねた。米軍普天間飛行場を一望できるこの高台は、太平洋戦争末期の沖縄戦で屈指の激戦地となった場所でもある。そこに建つ青丘之塔(せいきゅうのとう)には、沖縄戦の知られざる犠牲者のことが刻まれている。

〈嗚呼ココ沖縄ノ地ニ太平洋戦争ノ末期カツテ日本軍タリシ韓民族出身ノ軍人軍属三八六柱ガ山河ヲ血ニ染メ悲シクモ散華シ侘シク眠ッテオラレマス〉

 青丘とは、中国の神話や伝説に現れる東方の地をいう。転じて、中国から東方にある朝鮮半島を指すようになった。石碑は沖縄戦によって犠牲になった386人の朝鮮半島出身者たちを慰霊するためのものだ。彼らは、陣地を構築し荷物を運ぶ軍夫として動員された。

 1971年、京都の右翼団体「日本民主同志会(日民同)」の中央執行委員長だった松本明重らが中心となって石碑は建てられた。朝鮮半島出身であっても、日本人として戦い亡くなったことに礼を尽くすべきとの考えからだった。

関連記事

トピックス

10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン