トップの宮内庁長官直属の総務課、秘書課をはじめ、皇室の儀式を執り行なう「式部職」、昭和天皇実録など皇室の記録を編纂したり、歴代天皇の陵墓を管理する「書陵部」、皇居や御用邸など宮内庁の施設を管理する「管理部」などの職員は《オモテ》と呼ばれるのに対し、天皇皇后の側に仕えて身の回りの世話をする「侍従職」と皇太子一家の世話をする「東宮職」の職員は《オク》と呼ばれる。宮内庁OBが語る。
「宮内庁が独特なのは、他の官庁の公務員は国民全体の奉仕者なのに対し、宮内庁職員は天皇家という家に仕える皇室のための官吏です。公務員としての意識の持ち方が全く違う」
宮内庁職員には、2つの採用ルートがある。
「一つは国家公務員試験に合格し、宮内庁の面接を受けて採用される職員。彼らは《オモテ》の部署に配属されることが多い。それに対して、天皇や皇太子のお側に仕える《オク》の職員には、とりわけいい加減な者を入れるわけにはいきませんから、事実上の縁故に近いかたちで、面接だけで採用される人もいる」(同前)
職員には、天皇や皇太子一家の食事をつくる和洋中それぞれの料理人、いわゆる「料理番」から、食材をつくる御料牧場、御料農場で農作物や家畜を育てている“農家”もいる。また、皇居の庭師、長良川に3か所ある宮内庁の鵜飼い場の「鵜匠(うじょう)」、千葉県と埼玉県にある鴨場の管理や鴨猟を行なう「鷹匠(たかじょう)」、式部職楽部に所属する雅楽の演奏家など特別な技能を持っている職員は、世襲に近い扱いで採用されるケースが少なくないという。
宮内庁に聞くと、「一部の職種では、面接のみによる採用をすることがある」という回答だった。