宮内庁の施設は各地にあり、東京から最も遠い勤務地は鹿児島県だ。天孫降臨したニニギノミコト(記紀では天照大神の孫で神武天皇の曾祖父)の陵とされる薩摩川内市の新田神社境内にある「可愛山陵」を、書陵部の職員が管理している。
出世のルールも独特だ。
「公務員試験をパスして採用されたプロパーの職員が、長官や次長、侍従長、東宮大夫など最高幹部に出世することは絶対にありません。
歴代の宮内庁長官は戦前の内務省の流れを汲む総務省、厚労省、国土交通省、警察庁の4省庁の事務次官経験者などが順番に就任し、次長は次の長官までの待機ポスト。一方、皇室の儀式や外国の賓客接遇を担当する式部職トップの式部官長は外務省儀典職経験者が就任し、その後、《オク》に入って侍従長や東宮大夫に就任するという具合に外務省の人事ローテーションに組み込まれています」(同前)
◆「天皇が雇う職員」もいる
宮内庁の組織が複雑なのは、皇居で働く職員には、宮内庁の組織には所属せず、天皇家が直接雇用する「内廷職員」がいることだ。
代表的なのは皇居の宮中三殿(賢所、皇霊殿、神殿)での祭祀を行なう「掌典」(男性)や、巫女の「内掌典」と、それを補佐する「仕女」である。さらに皇后が蚕を飼っている「御養蚕所」や、天皇の「生物学研究所」の職員など人数は約50人とされる。