日本国憲法第1章第1条は天皇をこう規定します。
〈天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く〉
明治憲法では「天皇ハ神聖ニシテ侵スへカラス」とあり、天皇の存在は絶対にして不可侵でした。対して戦後の日本国憲法は、天皇の地位は「日本国民の総意」に基づくものと定めます。要は、国民みんなが支持しているから、天皇という地位にいるということです。
何ともわかりにくいのは「象徴」という言葉ですが、英語では「シンボル」。「鳩は平和のシンボル」と言うように、鳩は平和を象徴しています。それと同じように、天皇は日本のシンボルであると言われます。
象徴の意味について、最も考え抜かれたのが、現憲法のもとで即位した今上天皇です。常に弱い立場にある人を思いやり、福祉施設や災害被災地を訪れては、一途に国民の声に耳を傾け、思いに寄り添う天皇の姿を見て、どれだけの人が勇気づけられたでしょう。
その積み重ねの中で、「日本国の象徴、国民統合の象徴とはこういう活動をされる人のことなんだ」との理解が国民に広まりました。
■天皇の仕事とは
天皇の活動は一般的に、(1)国事行為、(2)公的行為、(3)その他の行為、の3種類に分けられます。
このうち国事行為は憲法で定められ、天皇は国会を召集したり、衆議院を解散したり、大臣や最高裁判所の裁判官の任命を認証したりします。天皇には実際の政治をする力が与えられず、国事行為はすべて「内閣の助言と承認」を必要とし、「内閣がその責任を負う」と定められています。