とはいえ、大嘗祭に国費を用いるかどうかは政治の話であり、秋篠宮の発言は憲法に抵触する怖れがあります。識者の間では、秋篠宮は天皇ではなく、皇族なので発言権はあるとの意見がある一方、皇位継承順位が2位であることから、いずれ天皇になるかもしれない立場の方が政治的な発言をするのは問題があるとの意見もあります。

 難しいのは、今後、政府が大嘗祭の公費支出を見直せば、秋篠宮発言はまさに政府を動かした政治的発言となることです。かといって、政府が一切応じないでいると、あえて踏み込んだ発言をした秋篠宮の思いが黙殺されます。非常に皮肉な状態になっている。

 天皇は、日本国民の統合の象徴として様々な国事行為を担うと同時に、日本国民の安寧を願ってお祈りをする、神道のトップに立つ方でもあります。この「二面性」が天皇をめぐる様々な場面で、解きがたい難問として浮上するのです。

●いけがみ・あきら/1950年、長野県生まれ。慶應義塾大学卒業後、1973年NHK入局。報道局記者や番組キャスターなどを務め、2005年にNHKを退職。ジャーナリスト、名城大学教授、東京工業大学特命教授。著書に『池上彰の世界の見方 ロシア』『考える力がつく本』(小学館刊)、『池上彰の「天皇とは何ですか?」』(PHP研究所)などがある。

※週刊ポスト2019年1月1・4日号

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