母性本能をくすぐる“ひと癖アリ”の男性キャラが増えている、もう1つの理由としてあげておきたいのは、原作の選び方。最初に挙げた『凪のお暇』『偽装不倫』『Heaven?』は、すべて漫画原作であり、しかも手掛けているのは、女性の好む男性像を知り尽くした女性漫画家です。
各局のドラマプロデューサーたちは、女性視聴者の嗜好が細分化されていることを踏まえて、母性本能をくすぐる“ひと癖アリ”の男性キャラが複数登場するコンテンツを探して映像化。さらに、演技力のある若手・中堅俳優をキャスティングし、それが際立つ演出をすることで、思わずSNSでコメントしたくなるようなエッジの効いたキャラを生んでいるのです。
その点、今夏放送のドラマで異彩を放っているのは『ノーサイド・ゲーム』(TBS系)。50人を超える男性キャストがいながら、いわゆるイケメン俳優はいません。そのほとんどは武骨なラガーマンであり、現状では女性視聴者の熱狂は少ないものの、その希少性もあって、終盤には母性本能をくすぐるような存在になる可能性を秘めています。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。