芸能

『凪のお暇』は高橋一生の複雑な魅力を再発見する作品だった

番組公式HPより

 3か月の長丁場となれば、ひとりの俳優の魅力だけで視聴者を惹き付けるのはやはり難しい。いわゆる総合評価が極めて高かったのが『凪のお暇』。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
 今期話題のドラマ『凪のお暇』(TBS系金曜夜10時)がとうとう最終回を迎えました。まずは凪を演じた黒木華さんの演技が素晴らしかった。ふんわりと柔らかく綿飴のような人格の中に強い芯を隠し持った凪を見事に演じ切りました。

 そしてやはり、総括としては「高橋一生」。この役者の不思議さについて、あらためて確認することになりました。他の人には置き換えられない、この人にしかできない役というものがあるのだな、と感じた視聴者も多かったのではないでしょうか。その意味でも、「高橋一生の魅力を再発見する」作品だったように思います。

 高橋一生が演じた我聞慎二は、モラハラ気質。凪とつきあっていた時は彼女を奴隷のように見下しののしってばかり。一方、フラれた後は諦められきれずに凪を追いかけ、自分の思いが伝わらずに顔をクシャクシャにして泣きじゃくる。しかし仕事場では一見スマートに業務をこなし部下に的確に指示し、営業実績を上げていく。

 という、いわば異質な性格が一人の中に混在している難しい人物。相手が誰かによって性格もスイッチしていくという役柄です。そんな慎二を演じるには一筋縄ではいきません。

 特に、「自然に」演じるあたりがポイント。風変りで極端な人格を、周囲に溶け込ませ気づけば慎二という人の存在が自然に見えてくる力業。これは高橋さんにしかできない芸当かもしれません。「余人をもって代えがたい」という印象です。

 だからこそ、よけい気になったのが前クール『東京独身男子』(テレビ朝日系)の時との大きな「違い」です。『東京独身男子』ではエリート気質の独身銀行マンを演じた高橋さん。スペックの高い二枚目という役が、スベりにスベッて見えました。演じているご本人もフィットしないのかノリが悪いのか、居心地悪そうで集中力が足りない風にすら見えました。もはや人気役者の勢いもこのあたりで打ち止めか、と感じた視聴者もいたはず。

 ところが。

 今回の演技のノリといったらどうでしょう!! 不死鳥のように息を吹き返しグイグイ視聴者を惹き付けて最後まで離さなかったのだから、すごい。

関連記事

トピックス

高校時代の安福久美子容疑者(右・共同通信)
《「子育ての苦労を分からせたかった」と供述》「夫婦2人でいるところを見たことがない」隣人男性が証言した安福容疑者の“孤育て”「不思議な家族だった」
活動再開を発表した小島瑠璃子(時事通信フォト)
《輝く金髪姿で再始動》こじるりが亡き夫のサウナ会社を破産処理へ…“新ビジネス”に向ける意気込み「子供の人生だけは輝かしいものになってほしい」
NEWSポストセブン
中国でも人気があるキムタク親子
《木村拓哉とKokiの中国版SNSがピタリと停止》緊迫の日中関係のなか2人が“無風”でいられる理由…背景に「2025年ならではの事情」
NEWSポストセブン
トランプ米大統領によるベネズエラ攻撃はいよいよ危険水域に突入している(時事通信フォト、中央・右はEPA=時事)
《米vs中ロで戦争前夜の危険水域…》トランプ大統領が地上攻撃に言及した「ベネズエラ戦争」が“世界の火薬庫”に 日本では報じられないヤバすぎる「カリブ海の緊迫」
週刊ポスト
ケンダルはこのまま車に乗っているようだ(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
《“ぴったり具合”で校則違反が決まる》オーストラリアの高校が“行き過ぎたアスレジャー”禁止で波紋「嫌なら転校すべき」「こんな服を学校に着ていくなんて」支持する声も 
NEWSポストセブン
24才のお誕生日を迎えられた愛子さま(2025年11月7日、写真/宮内庁提供)
《12月1日に24才のお誕生日》愛子さま、新たな家族「美海(みみ)」のお写真公開 今年8月に保護猫を迎えられて、これで飼い猫は「セブン」との2匹に 
女性セブン
新大関の安青錦(写真/共同通信社)
《里帰りは叶わぬまま》新大関・安青錦、母国ウクライナへの複雑な思い 3才上の兄は今なお戦禍での生活、国際電話での優勝報告に、ドイツで暮らす両親は涙 
女性セブン
東京ディズニーシーにある「ホテルミラコスタ」で刃物を持って侵入した姜春雨容疑者(34)(HP/容疑者のSNSより)
《夢の国の”刃物男”の素顔》「日本語が苦手」「寡黙で大人しい人」ホテルミラコスタで中華包丁を取り出した姜春雨容疑者の目撃証言
NEWSポストセブン
石橋貴明の近影がXに投稿されていた(写真/AFLO)
《黒髪からグレイヘアに激変》がん闘病中のほっそり石橋貴明の近影公開、後輩プロ野球選手らと食事会で「近影解禁」の背景
NEWSポストセブン
秋の園遊会で招待者と歓談される秋篠宮妃紀子さま(時事通信フォト)
《陽の光の下で輝く紀子さまの“レッドヘア”》“アラ還でもふんわりヘア”から伝わる御髪への美意識「ガーリーアイテムで親しみやすさを演出」
NEWSポストセブン
ニューヨークのイベントでパンツレスファッションで現れたリサ(時事通信フォト)
《マネはお勧めできない》“パンツレス”ファッションがSNSで物議…スタイル抜群の海外セレブらが見せるスタイルに困惑「公序良俗を考えると難しいかと」
NEWSポストセブン
中国でライブをおこなった歌手・BENI(Instagramより)
《歌手・BENI(39)の中国公演が無事に開催されたワケ》浜崎あゆみ、大槻マキ…中国側の“日本のエンタメ弾圧”相次ぐなかでなぜ「地域によって違いがある」
NEWSポストセブン