そうした経験を経た雅子さまにとって、自身が皇后となることを国民は受け入れるのか、不安は尽きなかっただろう。昨年12月、皇后になられて初めての誕生日を迎えられたご感想文書に、そんな不安が垣間見える。
《多くの国民の皆様から、思いがけないほど本当に温かいお祝いを頂きましたことに、心から感謝しております》
“思いがけない”という一言に、胸中が凝縮されているのではないだろうか。
昨年の即位関連行事で雅子さまがお出ましされるたび、国民は雅子さまに温かな視線と歓声を注いだ。
コラムニストで皇室ウオッチャーの辛酸なめ子さんは“第2次雅子さまブーム”の到来を感じたという。
「1993年のご成婚のときを『第1次ブーム』とするならば、昨年5月前後から続く御代がわりのタイミングが『第2次ブーム』でしょう。即位が近づくにつれて、世の中が雅子さまを応援するムードになるのを感じました。
皇太子妃時代には、どこかこわばった表情が多かったように感じましたが、即位のパレードで見せられた表情は、打って変わったような自然な笑顔。素晴らしい笑顔に、国民は安心したことと思います。つらい経験をされたからこそ出る慈愛を、いまの笑顔から感じます」
昨年11月10日に挙行された即位に伴うパレード「祝賀御列の儀」で、沿道に詰めかけた約11万9000人からの祝意を一身に浴びられた雅子さま。道中、涙を浮かべながら手を振られるお姿に感動を覚えた人は多いだろう。
『素顔の雅子さま』(河出書房新社)の著者で放送作家のつげのり子さんは、その日の雅子さまの手に、“誠心誠意応えよう”というお気持ちが表れていたと話す。
「オープンカーの後部座席に座られた雅子さまは、実は、お手振りされていない方の手でドアの内側のハンドルをしっかり握られていたのです。揺れる車の中で、そうしてバランスを取りながら体をねじり、沿道の人々にできるだけ正対しようとされていらっしゃいました。
いくら車がゆっくり走るとはいえ、片手でバランスを取りながらお手振りされるのは苦しい体勢だったはず。できる限り国民の方を向いて感謝を伝える、雅子さまの誠実なお気持ちが感じられました」
パレード前夜に皇居前広場で行われた「天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典」では、奉祝曲を聴かれた雅子さまが涙を流される場面があった。
「即位関連行事で雅子さまが見せられた涙は、国民への “感謝”の表れだと思います。つらい時期があっても、いつか乗り越えられるときが来る。そんな希望を多くの女性に与えたのではないでしょうか」(つげさん)