注目の吉田は日ハムへ(時事通信フォト)
井元は後年、江川が桑田に対し、こんな発言をしたという話を耳にした。
「お前は良かったな。俺のプロ入りは他人が決めたけど、お前は早稲田にするか、巨人に入るかを自分の意志で決められたんだから」
ドラフトは、時に有望選手の人生を狂わせてきた。
◆高卒プロ入りがいいとは思わない
しかし、井元にはドラフトに対する信念がある。
「それはね、クジになろうが、ドラフトで決まる球団が、その選手に最も相応しい球団だろうということ」
8球団が競合した1989年の野茂英雄や1998年の松坂大輔ら、井元が直接、関わっていないスターたちに対しても、その思いは同じだ。ドラフトとは運否天賦で、決まった球団が最良の道──。
1987年に春夏連覇を達成した時の主将である立浪には、当時の南海監督・杉浦忠がご執心だった。しかし、中日の星野仙一も後発ながら名乗りを上げ、ドラフト前にその理由を井元が問うと、星野は「立浪が来てくれたら中日のショートは10年は安泰だ」と答えたという。その星野が、クジを引き当てる。直後、井元は杉浦からこんな言葉をもらった。
「申し訳ない。日頃、酒ばっかり飲んで、不摂生のバチが当たってしまった」
井元は通算187勝した球界の大エースからの謝罪に恐縮しきりだったという。