1991年にドラフト外入団が廃止に。1993年には逆指名制度が導入されるなどしたが、07年に西武の裏金問題が発生し、完全撤廃。その間も、井元は教え子をプロの世界に送り出し続けた。
「高卒でプロに入ることを、私が積極的に薦めたことは一度もない。高校生が夢を持つのはいいが、早急にプロに行けば、結果を残せず、失望する結果になってしまうことだってある。大学、社会人を経ることも、決して遠回りではないわけです。PLでいえば、今岡(誠)がそう。高校時代に阪神から話があったが、私はまだ早いと思って東洋大を紹介した。すると1年生からチャンスを掴み、五輪にも出た。結果、逆指名の1位で阪神に入ったわけです」
今年は、春夏連覇を達成した大阪桐蔭の根尾昂が中日に、夏の決勝で大阪桐蔭に敗れた吉田輝星は日本ハムから指名を受けた。
吉田とも井元は浅からぬ因縁がある。井元が選手勧誘を担当する明桜と金足農業はライバルで、2年連続で秋田大会の決勝を戦った。
明桜の山口航輝は、井元が声をかけ、大阪から秋田に向かわせた教え子である。昨夏の決勝までは吉田を上回る評価の投手だったが、吉田の牽制で帰塁した時、右肩を脱臼し、この夏までに完全回復は叶わなかった。しかし、広角に力強い打球を放てる打力が評価され、ドラフト候補となっていた。
井元はドラフト前、山口にこう告げていた。
「何球団から調査書が届いたとか、いろいろと一喜一憂しておったから、『指名はないと思っておいた方がいい』と伝えていたんだよ」
それは杞憂に終わり、山口は4位で千葉ロッテに指名された。体が続く限り野球に携わっていたいと常々話している井元。次にプロに送り出す選手は、誰になるのか。
※週刊ポスト2018年11月9日号