芸能

『なつぞら』絶好調を支える脚本家「入れ子芝居」の妙

『なつぞら』出演者たち

 高評価が定まりつつある朝ドラ。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が、脚本家の技巧について言及する。

 * * *
 NHK連続テレビ小説『なつぞら』が絶好調。平均視聴率は22.1%(第8週まで)と、実に安定した走りっぷりを見せています。このドラマの何が牽引役となっているのでしょうか?

 まず冒頭の2週間、子役時代のなつを演じた粟野咲莉の演技のうまさに、心をグッとつかまれた視聴者が続出しました。なつが広瀬すずになってからの北海道シーンでは、「祖父」泰樹(草刈正雄)となつとのやりとり、泰樹の人生経験から絞り出される深いセリフに感動した、涙した、といった称賛の声が聞かれました。

 一方で吉沢亮、岡田将生、工藤阿須加……ズラリと揃った「イケメン祭り」が牽引役、という声も聞かれます。また、過去の朝ドラヒロインのオンパレード出演──松嶋菜々子、小林綾子、比嘉愛未、山口智子らがとっかえひっかえ出てくる面白さが際立っているから、と見る向きも。

 そう、どれもが絶好調の要因に違いありません。ただ、私がこの朝ドラで最も注目している点は別のところにあります。一言でいえば、脚本家・大森寿美男の「入れ子芝居」のテクニックです。

 ご存じのように入れ子とは一つの枠組の中にまた入れ物があって、またその中に別の入れ物がある……という仕掛け。『なつぞら』の一番大きな入れ物としては、まず「なつの成長物語」があります。戦争で両親を失った孤児の女の子が、北海道で新たな「家族」を得て、東京で実の兄と再会し自分の夢に向かって羽ばたいていく、という本筋を入れる器です。

 その大きな物語の「器」に、また別の物語の「器」が入っている。例えば高校生のなつが所属する演劇部でお芝居『白蛇伝説』を上演。なつはヒロイン・ペチカを演じます。この芝居はただの劇中劇に留まらず、本筋である家族の話や泰樹と農協との確執といったことに絡んでいき、なつと泰樹との新たな関係へとつながる。その技巧的展開は見事でした。

 あるいは、東京・新宿編では「ムーランルージュ新宿座」のきらびやかな舞台。クラブ「メランコリー」では歌手・煙カスミ(戸田恵子)にパッとスポットライトが当たりゴージャスな衣装に身を包んだカスミの華やかな声が響きわたる。そう、一瞬にして別世界が立ち現れるワクワク感がいい。

 岸川亜矢美(山口智子)の踊り子シーンに咲太郎(岡田将生)のタップダンスと、他にも小さな舞台がいくつも用意されています。ロシアの玩具・マトリョーシカ人形はよく知られていますが、このあたりはいわば“マトリョーシカ的ドラマ仕掛け”と言ってもよいのかも。

関連記事

トピックス

事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《あなたとの旅はエキサイティングだった》戦力外の前田健太投手、元女性アナの年上妻と別居生活 すでに帰国の「惜別SNS英文」の意味深
NEWSポストセブン
1992年にデビューし、アイドルグループ「みるく」のメンバーとして活躍したそめやゆきこさん
《熱湯風呂に9回入湯》元アイドル・そめやゆきこ「初海外の現地でセクシー写真集を撮ると言われて…」両親に勘当され抱え続けた“トラウマ”の過去
NEWSポストセブン
笑顔に隠されたムキムキ女将の知られざる過去とは…
《老舗かまぼこ屋のムキムキ女将》「銭湯ではタオルで身体を隠しちゃう」一心不乱に突き進む“筋肉道”の苦悩と葛藤、1度だけ号泣した過酷減量
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:
【激太りの近況】水原一平氏が収監延期で滞在続ける「家賃2400ドル新居」での“優雅な生活”「テスラに乗り、2匹の愛犬とともに」
NEWSポストセブン
折田楓氏(本人のinstagramより)
「身内にゆるいねアンタら、大変なことになるよ!」 斎藤元彦兵庫県知事と「merchu」折田楓社長の“関係”が県議会委員会で物議《県知事らによる“企業表彰”を受賞》
NEWSポストセブン
“ボディビルダー”というもう一つの顔を持つ
《かまぼこ屋の若女将がエプロン脱いだらムキムキ》体重24キロ増減、“筋肉美”を求めて1年でボディビル大会入賞「きっかけは夫の一声でした」
NEWSポストセブン
チームを引っ張るドミニカ人留学生のエミールとユニオール(筆者撮影、以下同)
春の栃木大会「幸福の科学学園」がベスト8入り 元中日監督・森繁和氏の計らいで来日したドミニカ出身部員は「もともとクリスチャンだが幸福の科学のことも学んでいる」と語る
NEWSポストセブン
横山剣(右)と岩崎宏美の「昭和歌謡イイネ!」対談
【横山剣「昭和歌謡イイネ!」対談】岩崎宏美が語る『スター誕生!』秘話 毎週500人が参加したオーディション、トレードマークの「おかっぱ」を生んだディレクターの“暴言”
週刊ポスト
”乱闘騒ぎ”に巻き込まれたアイドルグループ「≠ME(ノットイコールミー)」(取材者提供)
《現場に現れた“謎のパーカー集団”》『≠ME』イベントの“暴力沙汰”をファンが目撃「計画的で、手慣れた様子」「抽選箱を地面に叩きつけ…」トラブル一部始終
NEWSポストセブン
母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん “トランプショック”による多忙で「眞子さんとの日本帰国」はどうなる? 最愛の母・佳代さんと会うチャンスが…
NEWSポストセブン
春の雅楽演奏会を鑑賞された愛子さま(2025年4月27日、撮影/JMPA)
《雅楽演奏会をご鑑賞》愛子さま、春の訪れを感じさせる装い 母・雅子さまと同じ「光沢×ピンク」コーデ
NEWSポストセブン
自宅で
中山美穂はなぜ「月9」で大記録を打ち立てることができたのか 最高視聴率25%、オリコン30万枚以上を3回達成した「唯一の女優」
NEWSポストセブン