「2009年の名古屋場所で、山口組系弘道会の幹部らが維持員席で観戦していたことが、2010年5月に発覚した。NHKの中継に映り込む砂かぶりで観戦することで、服役中の幹部に元気な姿を見せることが目的だったとされている。一般販売されない“特別席”にあたる維持員席のチケット手配に複数の親方が関与していたことも明らかになった」(ベテラン記者)
その後、他の場所でも暴力団員が維持員席で観戦していたことや、地方場所で暴力団関係者から宿舎の手配を受けていた部屋があったことなども、立て続けに発覚。
直後の2010年7月の名古屋場所ではNHKの生中継が中止となるなど、大相撲は存続の危機に追い込まれた。
協会は組織改革のために外部有識者からなる委員会を設置。2010年8月には「暴力団等排除宣言」を発表し、当時の放駒理事長(元大関・魁傑、故人)や横綱・白鵬が会見して、関係廃絶を宣言した経緯がある。
問題がここまで相次いで発覚したことからも明らかなように、「大相撲とヤクザ」の関係は深い。暴力団に詳しいジャーナリスト・溝口敦氏が解説する。
「かつては暴力団関係者が地方巡業を取り仕切っていて、関係はなかなか断ち切れるものではない。伝統的に、地元の暴力団関係者が巡業先でのトラブル処理にあたってきたし、現役力士が起こした揉め事を暴力団員が収めることもあった。暴力団関係者の側としては、大物力士を宴席に連れて行ったりすれば、相手の信用を得ることにもつながる。
近年は暴力団排除の規制が進んでシノギが苦しくなっていることもあり、ヤクザが羽振りよく祝儀を包むのは難しくなっている。ただ、引退して角界を去った元力士を暴力団傘下の半グレ集団などが吸収していく構図はあり、暴力団の側が角界とつながりを持つメリットは依然としてある」