このような「同じことをするな」「聞いちゃダメ」という指導法で、欽ちゃんは関根勤や小堺一機、勝俣州和、風見慎吾(現・しんご)、柳葉敏郎など数多くのスターを生み出してきた。
この、バラエティ界の礎を築いてきた萩本と同様の指導を実践していたのが、ジャニー喜多川氏だ。中居正広が、ジュニア時代を振り返った発言から読み解いてみよう。
〈トークの中にユーモアを入れると、たまにウケたりするんですよ。若い時だと嬉しいじゃないですか。それで繰り返し連発するんですよ。すると(ジャニーさんが)怒るんですよ。『同じことを繰り返さないでくれ。いくらウケたからって、なんで同じことを繰り返すんだ』と。違うことを考えながら積み重ねなさいって〉(『中居正広のニュースな会』テレビ朝日系・2019年7月13日放送)
ジャニー氏はステージの本番当日にいきなり振付を変えることも頻繁にあった。その時、タレントに「できません」という選択肢はない。欽ちゃんと同じような無茶振りが、タレントの成長を促していったのだ。
ジャニー氏の教えがあったためか、河合や塚田はすぐに萩本の言葉を飲み込めたようだ。当初はやや戸惑っていたが、わずか数分でコツを掴んで笑いを取り、最終的には欽ちゃんに褒められていた。
ジャニー氏と萩本は1960年代から親交を深め、1988年には『欽きらリン530!!』(日本テレビ系)をきっかけにジャニーズ事務所と他事務所の融合グループであるCHA-CHAが生まれている。同番組には当初、草なぎ剛も出演しており、木村拓哉も稽古に参加していた。中居正広は1994年公開の映画『欽ちゃんのシネマジャック』に出演し、香取慎吾は同年の『よ!大将みっけ』(フジテレビ系)で萩本と共演。SMAPは、吸収力の高い10代の頃にジャニー氏、欽ちゃんという2人の名プロデューサーから指導を受けていたわけだ。