「破門・絶縁者をどんどん拾い、普通ならそれなりの試用期間をおくはずなのに、野内組ではすぐにそれなりの仕事をさせる。ちょっと怖い気がするが、それだけ(統制に)自信があるのだろう」(指定暴力団の代紋頭)
ヤクザ記事風にいえば、「イケイケの売り出し中」ということだ。弘道会への銃撃事件翌日も、野内組長が襲撃現場となった施設に顔を出すのではと噂になった。
今年10月末には府中刑務所収監中の六代目山口組ナンバー2の高山清司若頭が出所する。事件後、施設の敷地脇に粗大ゴミが積まれていたのは、高山若頭を迎えるための大掃除をしていたからという。弘道会の牙城を守る中核メンバーとして事件の現場を視察するのは当然だし、実行犯は誰なのか証拠を集める必要もあろう。
ただ実行犯の割り出しは、ヤクザにとって大問題ではないかもしれない。暴力団の報復にエビデンスはいらない。神戸の拠点前で組員の体に銃弾をぶち込まれた以上、報復する大義名分は十分にある。
現在、ヤクザの抗争事件で人を殺せば、判決はほぼ無期懲役である。被害者が助かったとはいえ、実行犯は迷宮入りを狙って周到に準備をしていただろうし、もし捕まれば長期刑は免れない。事件から数日が経過しても、捜査線上には具体的な容疑者名があがっていない。実行犯がこのまま逃げ切る可能性は少なくない。
「ヤクザは推論で動く。裏付けがいるのは警察だけだ。かつて弘道会の殺人部隊として噂になった『十仁会』は、さほど実態がなかったと言われているが、資金力もあり、組員層の厚い弘道会なら、今後、実際にそうした部隊を組織することは十分可能だ」
捜査関係者は仰々しい口調で、マンガチックな評価を下す。警察にそう言わせるだけの力が弘道会にはある。
◆10月出所の前に