その後もプロテニスプレイヤーの大坂なおみ選手が出演するANAの国内版テレビCM「ひとには翼がある」篇のCMソングとして「飛行艇」を、坂口健太郎出演のブルボン「アルフォート」のCMソングとして「傘」を書き下ろし。年末にはNHK『紅白歌合戦』に出演し「白日」をパフォーマンス。『輝く!日本レコード大賞』でも優秀アルバム賞を受賞するなど、1年足らずでJ-POPシーンに風穴を開ける存在となった。
駆け足で辿った経歴からもわかるとおり、彼らは様々な企業や作品のタイアップ曲を書き下ろす機会に恵まれている。その理由として大きく挙げられるのは、バンドが持つ「バンドサウンドという枠を超越した音のアプローチの豊かさ」と「スタイリッシュでありながらパッション溢れるロックバンドとしての姿勢」だ。
King Gnu自ら“トーキョー・ニュー・ミクスチャー・スタイル”を名乗るとおり、彼らのサウンドは、オルタナティブロック、サイケデリックロック、ハードロックなどのロックを基盤に、ジャズやヒップホップ、クラシックなど様々な音楽性を取り入れている。文字にしてみるとなにやら難解な楽曲に思えてしまうが、それをポップに色づけるのが井上陽水や山下達郎、玉置浩二といった歌謡曲を彷彿とさせる耽美なメロディだ。
そのメロディを歌うのが、常田と井口というふたりのボーカリストである。低音が艶やかに響く常田、東京藝術大学声楽科出身という実力を持つ繊細な高音が特徴的な井口と、ふたりの声のキャラクターは全くもって正反対。本来なら散漫とした印象を与えがちになるが、様々なサウンドアプローチが可能なバンドにとっては、それは武器にしかなり得ない。