赤木春恵(7位)にはアンケートで「風貌、しゃべり方、気さくな雰囲気すべてがお母さん」「母性愛に溢れたお母さんの代名詞」と絶賛する回答が多数寄せられた。
秋本氏が推すのは森光子(9位)だった。
「人気ドラマ『時間ですよ』(TBS系・1965年)で銭湯を経営する明るく前向きな女将さんを演じ、多くの男性が心を掴まれた。やがて“日本のお母さん”と称されるまでになりました」
10位につけた竹下景子は『クイズダービー』(TBS系)で活躍した名回答者でもある。
「堅実な母親を演じてきた印象ですが、クイズで見せた機転が“インテリお母さん”のイメージを後押ししたのかもしれません。当時、竹下さんは理想の妻とも言われていましたね」(秋本氏)
彼女の出演作品を見ていた回答者からは「落ち着きのある母親らしい優しさと存在感を感じる」「品があって聡明」との声が届いた。
人間臭い母親像
トップ10のなかで、最も若いのが52歳の和久井映見(7位)だ。
2021年のNHK大河ドラマ『青天を衝け』で、渋沢栄一の母親役を演じたのが記憶に新しい。2007年の連続テレビ小説『ちりとてちん』でも主人公の母親を演じ、役者にとってステータスともいえる「大河」と「朝ドラ」を手に入れた彼女は、同年代女優に2倍以上の得票差をつけた。
その和久井と同い年なのが、永作博美(21位)。中森氏はこう評価する。
「2011年公開の映画『八日目の蝉』の演技は圧巻でしたね。永作さん演じる独身女性が、不倫相手の家に置き去りにされていた赤ん坊を連れ去って育てるというストーリーですが、血のつながっていない子に深い愛情を注ぐ美しい親子愛が描かれていた。永作さんが誘拐犯として警察に捕まってしまうシーンで涙がこぼれました」
永作は朝ドラ『舞いあがれ!』(2022年)でもヒロインを温かく見守る母親を好演した。
薬師丸ひろ子(20位)、小泉今日子(21位)、夏川結衣(25位)らも母親役としてはまだまだ若手。
昭和、平成、令和……と時代の流れを受けて、「母親像」も変化していく。秋本氏は吉永が主演を務める、今年9月公開の映画『こんにちは、母さん』の試写を見てこう感じ取った。
「吉永さんは夫に先立たれた女性役で、寺尾聰さん演じる男性と知り合ってほのかな恋心を抱きます。しかし“老いらくの恋”に破れ、大泉洋さん演じる息子と一緒にやけ酒を飲む。
昭和の時代とは違って、母親の“女”としての素の部分や、人間臭い欠点が描かれている。自立した現代の母親を映しているのだと思います」