国内

美智子さま、約28年ぶりの歌集で明らかになった「拉致被害者への秘めたる思い」 “忘れてはいけない”31音に込められた静かな祈り

歌集を刊行された美智子さま(2025年1月2日、東京・千代田区。撮影/黒石あみ)

歌集を刊行された美智子さま(2025年1月2日、東京・千代田区。撮影/黒石あみ)

 美智子さまが、約28年ぶりに歌集を刊行された。ご自身がこれまでに詠まれた御歌から選ばれたのは、「皇后」というお立場を退かれたいまだからこそ世に送り出すことができる、美智子さまの「個人的で率直な思い」が綴られた御歌だった。

 数年前までは新年恒例の宮中行事のため、ご多忙を極めた1月を上皇ご夫妻は穏やかに過ごされた。おふたりは、日課であるお住まいの散歩や本の音読、上皇さまのライフワークであるハゼの研究などに励まれている。その傍らで、美智子さまは1月15日、長年詠み続けてこられた短歌をまとめた歌集『ゆふすげ』を刊行された。

「昭和と平成の時代に詠まれた全466首が収録されています。歌集にはタイトルに取られたゆうすげの花にちなんだものや、公務で出会った人々や上皇さま、ご家族への思いを詠まれたもののほかに、その時々に起きた社会事象について美智子さまが抱かれた気持ちを表された作品が収められています。なかでも、日本社会を騒然とさせた、昭和、平成にわたるあの大事件については強い悔恨を御歌に込められました」(宮内庁関係者)

 美智子さまは幼い頃からお歌に親しんでこられた。

「美智子さまは小学生の頃からお歌を詠まれていたそうで、上皇さまとのご成婚前には、1日1首を詠む『百日の行』を実践され、腕を磨かれました。その後も、公務の合間を縫ってハイペースで詠まれてきたので、歌会始などの行事や歌集などでも世に送り出せなかったお歌がたくさんあったのです。今回の歌集に収められたのは、すべて未発表のものです」(皇室記者)

 美智子さまが初めて単独で歌集を刊行されたのは1997年のこと。『皇后陛下御歌集瀬音』と題され、著者は「皇后陛下美智子さま」とされているが、表紙に美智子さまの名は記されていない。しかし今回は表紙に「美智子」とご自身の名を刻まれた。

「この本は“バイアス(先入観)をかけずに読者に届くように”という思いのもと、『美智子』のお名前で出版されることになったそうです。つまり、歌集に掲載されているお歌はご自身の名を冠してどうしても世に送り出したかったもの。実際に、ご両親やほかの皇族方、被災地など、美智子さまが特に大切になさっている事柄を詠んだものが多く掲載されています。なかでも目をひくのは、北朝鮮による拉致の被害者について詠まれた3首の短歌です」(前出・皇室記者)

 たとえば、

〈言の葉の限り悲しく真向かへばひたこめて云ふ「お帰りなさい」〉

 という短歌は、2002年10月、北朝鮮から日本に帰国した5人の拉致被害者を思って詠まれたものだ。

「美智子さまはこの御歌を詠まれた2003年に、新潟県を訪問されました。拉致被害者の蓮池薫さん、祐木子さん夫妻と面会された美智子さまは、ふたりに『お帰りなさい』と声をかけられました。そのときのお気持ちをこの御歌に込められたのではないでしょうか」(放送作家のつげのり子さん)

 2004年5月には、2002年に帰国した拉致被害者の家族5人が、北朝鮮から日本に帰国。彼らのその再会に、

〈五月なる日の本の地に来し子らのその父母とある夜を思ふ〉

と思いをはせられた。

 まだ日本に戻れない拉致被害者のことも常に心に留めてこられた。2006年に詠まれた、

〈少年のソプラノに歌ふ『流浪の民』この歌を愛でし少女ありしを〉

という御歌がある。

「ウィーン少年合唱団の歌を鑑賞された際に、歌が上手だったという横田めぐみさんを想起されてお詠みになったそうです。『流浪の民』は住まいを転々とする民族を描いた歌。いまだ故郷に戻れないめぐみさんの心情を重ねられたのでしょう」(前出・皇室記者)

 これまで、拉致被害者やその家族に対する美智子さまの率直な思いが織り込まれたお歌が表に出たことはなかった。

「美智子さまは時事性の高い話題を短歌として詠むことに長けていらっしゃいますが、お立場上、国際的な社会問題に現在進行形のタイミングで言及するのは難しかった。それでもあふれる思いをお歌にしたためずにはいられなかったのでしょう。今回の歌集で、美智子さまの拉致被害者への秘めたる思いが明らかになりました」(前出・皇室記者)

関連記事

トピックス

隆盛する女性用ファンタジーマッサージの配信番組が企画されていたという(左はイメージ、右は東京秘密基地HPより)
グローバル動画配信サービスが「女性用ファンタジーマッサージ店」と進めていた「男性セラピストのオーディション番組」、出演した20代女性が語った“撮影現場”「有名女性タレントがマッサージを受け、男性の施術を評価して…」
NEWSポストセブン
『1億2千万人アンケート タミ様のお告げ』(TBS系)では関東特集が放送される(番組公式HPより)
《「もう“関東”に行ったのか…」の声も》バラエティの「関東特集」は番組打ち切りの“危険なサイン”? 「延命措置に過ぎない」とも言われる企画が作られる理由
NEWSポストセブン
海外SNSで大流行している“ニッキー・チャレンジ”(Instagramより)
【ピンヒールで危険な姿勢に…】海外SNSで大流行“ニッキー・チャレンジ”、生後2週間の赤ちゃんを巻き込んだインフルエンサーの動画に非難殺到
NEWSポストセブン
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
NEWSポストセブン
Benjamin パクチー(Xより)
「鎌倉でぷりぷりたんす」観光名所で胸部を露出するアイドルのSNSが物議…運営は「ファッションの認識」と説明、鎌倉市は「周囲へのご配慮をお願いいたします」
NEWSポストセブン
逮捕された谷本容疑者と、事件直前の無断欠勤の証拠メッセージ(左・共同通信)
「(首絞め前科の)言いワケも『そんなことしてない』って…」“神戸市つきまとい刺殺”谷本将志容疑者の“ナゾの虚言グセ”《11年間勤めた会社の社長が証言》
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“タダで行為できます”の海外インフルエンサー女性(26)が男性と「複数で絡み合って」…テレビ番組で過激シーン放送で物議《英・公共放送が制作》
NEWSポストセブン
ロス近郊アルカディアの豪
【FBIも捜査】乳幼児10人以上がみんな丸刈りにされ、スクワットを強制…子供22人が発見された「ロサンゼルスの豪邸」の“異様な実態”、代理出産利用し人身売買の疑いも
NEWSポストセブン
谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン