さて、新たに始まったドラマを見回すと--7月5日、NHKBSで始まった『ある日、アヒルバス』(日曜午後10時)は藤原紀香主演のドラマ。しかしいったいどんな人物を描こうとしているのか、視聴者にうまく伝わってこない。
主人公・浅倉葉月は、出版社で働き仕事に意欲を持っているのに契約を切られてしまった40歳という設定。そのわりにはパンツが見えそうなミニスカートにヒール、目張りメイクに喉から声を出すぶりっこ。かと思えば、人に説教したり自虐的なグチを吐いたり、人物像が支離滅裂。バスの中で延々とカラオケを歌う姿を見せられて、ゲンナリしてしまった視聴者も多いのでは。
これって、ドラマというより、ただ「藤原紀香」を見せるために作られたプロモーションビデオ? 事前の片岡愛之助との密会報道も、このPVを告知する周到な仕込みか。ゴリ押しのタレントに主役をやらせとけばいい的安易な作りが、脇役のキムラ緑子のやる気さえも奪っているように映る。
一方、6日にスタートした話題のドラマが『デスノート』(日本テレビ系日曜午後10時30分)。過去に人気を集めたコミックや映画があり、今回はそのドラマ版ということで注目度はとても高い。が、人々の関心が今後持続するのかどうか。
映画版で松山ケンイチが演じたLは、実に強烈な印象を残している。では今回、山崎賢人が演じるLは? 特殊なメイクを施した顔は、なぜか可愛いオンナの子にしか見えない。松ケンが漂わせていた独特の個性、不気味な迫力を超えることが果たして可能なのか。
8日に15分拡大版で始まった『リスクの神様』(フジテレビ系水曜午後10時)は堤真一、戸田恵梨香、古田新太、吉田鋼太郎、小日向文世と、役者の配置は文句の付けようがない。テーマも「企業のリスク管理」と、斬新かつ時代にフィット。しかしドラマ全体の出来は……2回目以降を見て、あらためて論評してみたい。
『天皇の料理番』が拓いた、ドラマの地平。どこまでそこに迫るような「ドラマ作り」が見られるのか。今後続々と展開されていく夏ドラマに期待しています。