この傾向は、阪神に限ったことではない。小早川毅彦(広島)は〈3連覇した実力と、OBとしての願望込みで広島を1位とした〉(3月28日付・サンケイスポーツ)とハッキリと書いている。
これらの例を見てもわかるように、自分が現役時代に在籍したチームには甘い採点になるのではないか。
そこで、評論家の順位予想を「古巣」と「古巣以外」に分けて、平均値を出してみた(各評論家の最も長い実働年数のセ・リーグ球団を「古巣」と定義。たとえば、金村義明は近鉄13年、西武3年、中日2年だが、セは中日のみ在籍のため、中日を「古巣」とする)。
巨人を「古巣」とする評論家は18人。そのうち、中畑清や桑田真澄など14人が1位に。西本聖など4人は2位に予想したが、平均1.22位となった。「古巣以外」の評論家57人では、野村克也(南海)や山田久志(阪急)など24人が1位、小山正明(阪神)や梨田昌孝(近鉄)など19人が2位に挙げ、Bクラスにしたのは6人のみ。「古巣」よりは平均が落ちたものの、1.97位となった。
以下に6球団のデータを上げよう(カッコ内は評論家の人数)。
【評論家のかつての所属球団別、セ・リーグ各球団の平均予想順位】
(球団名:古巣以外/古巣/順位の誤差)
巨人:1.97位(57人)/1.22位(18人)/0.75
広島:1.88位(69人)/1.17位(6人)/0.71
DeNA:3.73位(70人)/2.40位(5人)/1.33
ヤクルト:3.84位(70人)/2.80位(5人)/1.04
阪神:4.79位(62人)/3.15位(13人)/1.64
中日:5.81位(58人)/4.29位(17人)/1.52
「古巣」と「古巣以外」に分けたデータで、最も誤差の少なかったのは広島の0.71。一方、最も誤差の大きかったのは阪神の1.64。前述した吉田、藤田、狩野の3人が誤差を広げたことは間違いない。
誤差の程度はあれ、どの球団も“古巣には甘い予想”をする傾向がある。評論家の人数は「古巣・巨人」が最も多く18人で、「古巣・広島」の3倍に当たる。そのため、冒頭の全平均順位でトップに立ったという見方もできる。