古巣を最下位にしたのはいずれも中日で、金村義明、田尾安志、谷繁元信の3人だけ。ただし、評論家75人中50人(66.7%)が中日を6位予想しており、この3人を例外と言うには気が引ける。
微妙な心理変化を見せた評論家もいる。2004年、2006年と最多勝に輝き、中日を優勝に導いた川上憲伸だ。3月27日付の東京中日スポーツでは古巣を2位にしているが、翌日の『報道ステーション』(テレビ朝日系)ではなぜか3位に落としている。系列紙という事情を鑑みて、2位にしたのだろうか(※このため、川上の予想は『トーチュー』よりも最新日付の『報ステ』を優先した)。
川上と大学時代からしのぎを削り、昨年まで3年間、巨人の監督を務めた高橋由伸は巨人を優勝予想。しかし、理由を読むと揺れ動く心理が現われている。
〈巨人は試合終盤を担う中継ぎ陣に不安は残るが、投打のバランスは一番いい。丸の加入で打線強化に成功し、優勝争いは必至。丸が抜けた広島だが、選手層は厚く不安はなさそう〉(3月26日付・スポーツ報知)
少し意地悪な要約をすれば、「巨人=試合終盤を担う中継ぎ陣に“不安は残る”」「広島=丸が抜けたが、選手層は厚く“不安はなさそう”」となり、巨人もあくまで「優勝争いは必至」という書き方に留まっている。
監督として過ごした3年間で、高橋は嫌というほど広島の強さを思い知ったはずだ。高橋監督時代にコーチとして仕えた斎藤雅樹、井端弘和はフジテレビCS『プロ野球ニュース』内で「1位・広島」と予想。斎藤は「去年やってて、非常に強かったですね。それがすごく頭に残っていて」と素直な心情を明かした。
ヘッドコーチだった村田真一は高橋と同じ『スポーツ報知』で「1位・巨人」にしているが、〈力の差が紙一重の戦国模様。総合力で巨人が有利。クックが35セーブを挙げれば安泰だ。広島は丸が抜けても投手力がいい〉と評している。過去の巨人で35セーブ以上を挙げた外国人投手は、横浜から移籍してきた2008年のクルーン(41セーブ)だけ。少し条件を落としてみても、日本球界初の球団が巨人で1年目に30セーブ以上を記録した投手はいない(マシソンは来日3年目に30セーブ)。村田の“安泰条件”のハードルは高いように思える。
高橋と村田は自分の立場や新聞の特性を考えた上で、「1位・巨人」にした可能性もなきにしもあらずか。