目をとじて聞けば10歳の時の興奮がよみがえってくる。これだ。根っからのスポーツと芸能好きな山田は一話作るのに徹底的に話をきいて回り“取材する話芸家”となっていった。ファンもジワリジワリと増えていった。その取材力、記憶力、よどみない喋りを初めてきいた談志は「いいです。その喋り、競馬の実況をうちのセガレにも弟子にも教えてやってくれ」と言った。
「長嶋天覧試合本塁打」、「江川対掛布物語」、広島の「津田恒美物語」も十七回忌の時に作って口演した。得意とする芸能畑も「藤山寛美物語」、「永六輔物語」などが印象深い。
さぁそこで私はまたひとつ課題を出してみた。爆笑問題の太田光という創造者も魅力的なのだが、その父のエピソードがなんとも愉快でユニークなのだ。
頭でっかちの下らねぇ評論家と違って物を産み出す職人であり芸術家なのだ(私も太田も芸術学部)。そうこうしている内に数か月前NHKの『ファミリーヒストリー』で太田の父と母が取りあげられ、そのDNAの素晴しさに感動。あの両親から産まれた東京漫才の雄なのだ。
いま山田はウラ取材を重ね「太田光物語」を一気に語りおろす。5月1日(金)。爆問の事務所は阿佐ヶ谷なので、太田のホーム「座・高円寺2」で開催。太田も私も松村邦洋も出演。3月27日(金)前売開始。
■イラスト/佐野文二郎
※週刊ポスト2020年3月20日号