実は、巨人が9年連続日本一になったV9時代の後半、平均視聴率は20%に届いておらず、V9最後の1973年は16.6%だった。
「それが長嶋茂雄監督1年目で最下位に沈んだ1975年は21.5%と跳ね上がった。強い頃より弱い時の方が、数字が上がっていた。第1次長嶋政権の6年間で、最高は3連覇を逃した1978年の24.9%、2番目は江川卓入団1年目で5位に沈んだ1979年の24.6%です。2年とも優勝していません。
1980年代は全て20%を超え、最も良かった1983年は3年目の原辰徳がMVPを獲得し、江川や西本聖などの活躍で優勝しています。ただ、2番目の25.6%を記録した1982年、1984年は共に優勝を逃しています。この頃はFAもなく、若手を育てるしかなかった。その中で、駒田徳広、槙原寛己、吉村禎章の50番トリオなど毎年のように生え抜きが出番を増やしていった。そんな成長過程に、ファンが惹かれていた面もあるでしょう」
今年の巨人はオフのFA補強でロッテの鈴木大地、楽天の美馬学の獲得を目指したが、2人とも他球団に奪われ、獲得は叶わなかった。新加入選手は育成選手を除けば、外国人とドラフト指名のみ。生え抜きの若手にとって、チャンスの年になる。
「ファンも生え抜きスターを望んでいる。それは、1970年代後半や1980年代の視聴率からも明らかです。4番・松井秀喜を中心として、若手も台頭した2002年、平均視聴率は前年の15.1%から16.2%と上昇しました。翌年、松井がヤンキースに移籍したこともあって、視聴率は下がっていくのですが……。古いデータですが、ファンが惹かれる要素はそうは変わりません。今年の巨人は4番に岡本和真がどっしり座るでしょう。スタメンに俊足の吉川尚輝や3年目の大城卓三が加わり、昨年同様にベテランの亀井善行が渋い味を出す。そんな試合が常時、地上波で中継されれば、人気も徐々に回復するかもしれません」
多チャンネル化されていなかった1980年代はほとんど巨人戦しか中継されておらず、他球団のファンも巨人戦を見て、応援するチームの途中経過に一喜一憂していた。現在はBSやCSで12球団の試合が放送されており、プロ野球ファンが巨人戦に一極集中することはない。今年の中継で、日テレはどのくらいの数字を取れば合格点になるのか。