思えば、同CMに途中から加入したのは渡辺直美だった。“和製ビヨンセ”といわれた時代から彼女が大きくステップアップしたのは、やはりそのダンスのうまさだった。
渡辺が尊敬するのはナインティナインの岡村隆史で、理由は「誰にでもわかる動きや顔で面白さを追求しているから」だというが、その岡村も、『吉本印天然素材』時代からダンスのうまさには定評があった芸人だ。
“天素”は、あの夏まゆみ氏の指導を受けていたこともあり、メンバー全員に“心得”があるのだが、特に雨上がり決死隊の宮迫博之やFUJIWARAの藤本敏史、そして岡村がダンス名人。彼らもまた「踊れる」ことで、その仕事の幅を広げてきた。
CMや、お笑いだけではない。「踊れる」ことは、連続ドラマでも“役に立つ”。そう、エンディングの“恋ダンス”が視聴率アップの一因にもなっていた『逃げるが恥だが役に立つ』(TBS系)を思い出していただきたい。
キャストが次々登場するエンディングで、もっともキレッキレなダンスを披露していたのが古田新太だ。少々のレッスンでは完コピできない「プロのためのダンス」といわれた“恋ダンス”を涼しい顔で踊っていた古田。
長年、舞台で鍛えてきた軽やかな身のこなしとダンスの腕前は、『あまちゃん』(NHK)で「太巻さん」=元ダンサーのアイドルプロデューサーを演じたときにも発揮された。劇中歌『暦の上ではディセンバー』の振付師が、「実は古田さんがいちばんうまい」と評価し、覚えの速さにも驚いていたとも聞く。
その古田は『大和ハウス』の「ベトナムにも」篇で10名ほどのプロダンサーのセンターでキレッキレのダンスを披露したことも。「踊れる」ことが仕事を広げた典型ともいえる。
若手女優では、“踊れる”土屋太鳳が、Sia(シーア)のMVで圧巻のダンスを披露したのをきっかけに、『NHK紅白歌合戦』で郷ひろみのバックを務めたり、西武鉄道のCM「ちちんぷいぷい2017春夏」篇ではパパイヤ鈴木振付のコミカルなダンスを踊ったりと、明らかに仕事の幅を広げている。また、窪田正孝のようなイケメンや加藤諒のような個性派若手俳優らのダンスも「うますぎる」とファンの間では話題だ。
“恋ダンス”大ヒット以降、「踊るドラマ」は激増し、夏に向けて「踊るCM」の新作も増えつつある。中学校のみならず、芸能界でも「ダンス」は「必修」という時代がやってきた。