ただ、本当の問題は、「結果的に2作連続で似た設定になってしまった」こと。
宮藤さんの脚本は、「余命半年」を宣告された主人公が草野球チームの仲間と怪盗団を結成する『木更津キャッツアイ』(TBS系)、バカップルの妻がオッサンに変身してしまう『ぼくの魔法使い』(日本テレビ系)、A→B→C→D→Eとイニシャルで片想いがすれ違う『マンハッタンラブストーリー』(TBS系)。
落語とヤクザの世界をリンクさせた『タイガー&ドラゴン』(TBS系)、海女とご当地アイドルという2つの視点から地元愛を追求した『あまちゃん』、男子校と女子校の合併共学化を明るく描いた『ごめんね青春』(TBS系)、さまざまなゆとり世代の現実を書き分けた『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)など、誰もマネできないようなオリジナリティあふれる設定が魅力でした。
言わば、脚本家の中で最も設定がかぶりにくいタイプなのですが、宮藤さんほどの人気脚本家でも自分一人でドラマのテーマや舞台を決定することはありません。プロデューサーと二人三脚でテーマや舞台を決め、プロット(あらすじ)を作っていくという形になります。そもそも宮藤さんは「脚本は変えてもいいですよ」というくらい柔軟な人だけに、2作のテーマや舞台がかぶったのは、むしろプロデューサー側の問題とも言えるでしょう。
近年ドラマ業界では低視聴率を避けるために、刑事・医療・不倫・復讐など似たテーマや舞台の作品が増えています。『監獄のお姫さま』も当初、宮藤さんは「舞台を女子刑務所にしよう」と考えたところ、「それだけじゃドラマになりません」と諭されてストーリーを組み立てた結果、「思いがけず壮大な復讐劇になりました」とコメントしていました。
もし宮藤さんほど独自の世界観を持った脚本家が、視聴率をめぐるテレビマンの論理に巻き込まれて、作風に変化が生まれているとしたら……それはドラマ業界のためにはならないでしょう。
◆映画はさらに破天荒な作品ばかり