そんな折、豊川出演の映画『蚤とり侍』が話題だ。この映画で豊川は、主人公の堅物侍(阿部寛)に女の悦ばせ方を指南する商家の主人清兵衛を演じている。この主人は、嫉妬深い妻(前田敦子)に外出のたびにふんどしをまくり上げられて、とんでもない「浮気封じ」をされているのである。それでも懲りずに浮気にチャレンジするこの男は、妖艶な美女と風呂に入るわ、寝間では乱れまくるわ、ねっとり熱烈に濡れ場を堅物侍に見せつけ。
『半分、青い。』は豊川のヒットドラマ『愛していると言ってくれ』の北川悦吏子脚本、『蚤とり侍』は、豊川出演作『後妻業の女』の鶴橋康夫監督作品である。その縁を思えば、彼が気心の知れた人のために「一肌脱ぐ男」であるということがよくわかる(『蚤とり侍』では濡れ場のみならず、ふんどしに唐傘一本で大通りを歩く姿も披露し、文字通りの脱ぎっぷりだった)。
眉間にしわを寄せたまま、人を笑わせる。なのにバラエティーで素顔を見せることもない。私生活も謎。ひとことでいえば、「最後の秘境のような男」。ひとことで言われて、ご立腹のことと思うが、秋風も清兵衛もこの人でなければできなかったことは確かだ。これからも秘境のままでいてほしいものである。