「『カルテット』(TBS系)の『おとなの掟』もそうでしたが、ドラマの台詞に出てきそうな言葉が歌詞にあると視聴者の心に残りやすい。今は視聴者もネットで情報を簡単に得られるため、“誰誰が出演しているからこの曲を流さざるを得ないんだな”といった、“大人の事情”を感じ取ると冷めてしまう」
確かに昨今は出演者の同じ事務所のミュージシャンが主題歌を担当するというケースは少なくない。だが、かつては曲を聴けば、ワンシーンが思い浮かぶような、ドラマのイメージや内容とリンクする主題歌ばかりだった。
その代表例が、5位にランクインした1991年放送『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)の『ラブ・ストーリーは突然に』(小田和正)だろう。前出の西森さんが解説する。
「サビはもちろんですが、名曲はイントロが印象的な曲が多い。『ラブ・ストーリーは突然に』の“トゥクトゥン”というイントロを聴いたら、次はどうなっていくんだろうとワクワクしましたね」
ドラマ評論家の成馬零一さんはこう語る。
「フジテレビの当時のプロデューサー・大多亮氏は小田さんに“メイン視聴者であるOL層が思わず口ずさむような切ない感じの曲を”とリクエストしたそうです。大多氏の理想は高く、大御所の小田さんにも書き直しを命じたのは、伝説となっている」
このこだわりがあったからこそ、『東京ラブストーリー』は社会現象となり、「月9」という言葉はトレンディーを象徴する言葉となったのだろう。
バブル時代に青春を謳歌したという52才専業主婦は笑顔でこう振り返る。
「『ラブ・ストーリーは突然に』は当時の私のテーマソングでした。恋も仕事も遊びもガツガツしていて、気分はヒロインの赤名リカでした(笑い)」
ランキング6位の『101回目のプロポーズ』(1991年、フジテレビ系)の『SAY YES』(CHAGE&ASKA)にもこんな逸話が。
「視聴者から『SAY YES』のように、ドラマもハッピーエンドで終わらせてほしいという声が数多く届いたため、急遽結末が書き換えられたと局内では囁かれました」(フジテレビ関係者)
武田鉄矢演じる恋愛に不器用な中年男の健気な姿にほだされる女性は少なくなかった。会社の先輩と結婚したという53才会社員女性が語る。
「トラックの前に飛び出して“ぼくは死にましぇん”という武田鉄矢の名台詞を当時、恋人だった旦那がよくマネしていましたね。ドラマに入り込みすぎたのか、その彼はドラマと同じようにボルトを指輪代わりにプロポーズ。私も一瞬ヒロインの浅野温子になれた気がして…。うっかりOKしてしまいました(苦笑)」
※女性セブン2018年1月4・11日号