これらの傾向は、低視聴率報道や責任を主演俳優に問う世間の声を嫌い、プライムタイムへの出演は、内容と共演者を吟味しているから。ここまで培ってきたステイタスを下げず、主演俳優であり続けるための戦略なのでしょう。
しかし、ジャニーズ事務所は、それだけで終わりません。上記に挙げた以外の中堅には主演に次ぐポジションを、若手には経験を積ませつつ名前と顔を売るための2~5番手を確保しているのです。助演での活躍が視聴者やスタッフからの支持を集めれば、主演の道も開けてくるもの。つまり、2~5番手の助演での出演は、「バッシングを受けにくく、チャンスをうかがえる」という実に堅実な戦略なのです。
◆バラエティーにもジャニーズJr.を送り込む
堅実路線は連ドラだけでなく、バラエティーも同様。多くのジャニーズJr.を民放各局のレギュラーとして送り込むことで、大物MCたちとの仕事を経験させるとともに、視聴者に名前と顔を売っているのです。かつてのSMAPや嵐がそうだったように、連ドラとバラエティーの相乗効果でメンバーの実績と人気を上げながら、各グループのスケールを大きくしているのでしょう。
現在発売中の雑誌『AERA』『an・an』でKing & Princeが、『MORE』『Ray』でHey! Say! JUMPが表紙を飾るなど、他メディアへの露出も意欲的。昨年、TOKIOや関ジャニ∞のメンバーが脱退したほか、滝沢秀明さんも芸能界引退して裏方に回るなど、これまでジャニーズ事務所を担ってきた主力級がアラフォー世代に差しかかる過渡期だけに、若手の育成に注力している様子がうかがえます。
連ドラの主演に抜てきされると「ゴリ押し」と叩かれやすい時代だけに、5番手から4番手、4番手から3番手、3番手から2番手……と主演へのステップを刻む戦略は、「タレントを大切に育てる」という意味でも、理にかなっているのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。