慣れたご様子で馬と触れ合われた(写真/宮内庁提供)

慣れたご様子で馬と触れ合われた(写真/宮内庁提供)

■『看護婦の愛子』
※学習院女子中等科、高等科の生徒に配布された『生徒作品集』に収められたもの(2015年)

 私は看護師の愛子。最近ようやくこの診療所にも患者さんが多く訪れるようになり、今日の診療も外が暗くなるまでかかった。先生も先に帰り、私は片付けと戸締りを任されて、一人で奥の待合室と手前の受付とを行き来していた。

 午後八時頃だろうか。私は待合室のソファーでつい居眠りをしてしまった。翌朝眩しい太陽の光で目が覚め、私は飛び起きた。急いで片付けを済ませて家に帰ろうと扉をガラッと開けると、 思わず落っこちそうになった。目の前には真っ青な海が果てしなく広がっていたのだ。

 診療所は、一晩でどの位流されたのだろうか? いや、町が大きな海へと姿を変えてしまったのかもしれない。助けを呼ぼうとしたが、電話もつながらない。私は途方に暮れてしまった。

 あくる朝、私は誰かが扉をたたく音で目を覚ました。扉の外には片足を怪我した真っ白なカモメが一羽、今にも潮に流されてしまいそうになって浮かんでいた。私はカモメを一生懸命に手当てした。その甲斐あってか、カモメは翌日元気に、真っ青な大空へ真っ白な羽を一杯に広げて飛び立っていったのであった。

 それから怪我をした海の生き物たちが、次々と愛子の診療所へやって来るようになった。私は獣医の資格は持っていないながらも、やって来た動物たちに精一杯の看護をし、時には魚の骨がひっかかって苦しんでいるペンギンを助けてやったりもした。愛子の名は海中に知れ渡り、私は海の生き物たちの生きる活力となっていったのである。そう。愛子の診療所は、正に海の上の診療所となったのだ。今日も愛子はどんどんやって来る患者を精一杯看病し、沢山の勇気と希望を与えていることだろう。

■「藤原道長」
※学習院初等科で年に1回発行される文集『小ざくら』に掲載されたもの(2014年3月)

 藤原氏は、自分の娘を天皇のきさきとして、外戚関係を築くことにより、勢力を伸ばしていった。その中でも、藤原道長は4人の娘を天皇と結婚させ、摂政や内覧の座について権力を手中におさめていったことが分かった。授業で学習した「望月」の歌も、藤原道長について詳しく調べていくことで、なぜこのような歌を詠んだのかというその背景をつかむことができた。

 また、「御堂関白記」は、世界最古の自筆の日記として貴重なものであるが、実際に見てみると、汚れていなくてとてもきれいに残っていた。きれいに残っているのは、近衛家で大切に保管されていたからだと知った。

──中略──

 摂関政治について、授業で学習した時よりも深く知ることができたと思う。天皇と外戚関係を結ぶことによって、摂関政治を行い、権力を得ていたことが、今では考えられない不思議な制度だと思った。藤原氏が政治を行っていた時に、天皇とはどのように役割を分担していたのだろうか。藤原氏に権力が集中していても、天皇には仕事はあったのだと思う。
(一部抜粋)

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