芸能

平成のドラマが描いた女性像 ドクターXからミタ、昼顔まで

『ドクターX』『黒革の手帖』に主演した米倉涼子

 この平成時代、数々のドラマが制作されてきたが、女性の登場人物はどのように変化してきたのか--見えてきた特徴とは? コラムニストのペリー荻野さんが解説する。 

 * * *

 いよいよ平成最後の年末。30年間、さまざまなドラマが放送された。その大きな特長は、なんだかんだとわいわいやりつつ1話が終わるホームドラマや涙と笑いの青春ドラマといったスタイルは激減、テーマが仕事でも恋愛でも「勝ち負け」をくっきりと描く作品が増えたことだ。ドラマの中の女性像も「勝ち負け」が分かれ、視聴者は共感したり同情したり。全体に味は濃い目であった。

 平成ドラマ「勝った女」の代表といえば、特殊技能系。昭和のドラマにも「弁護士」「医師」などが活躍するシリーズが2時間ドラマを中心に数多くつくられたが、平成はさらに一歩進んで「スーパー」がつくほどの特殊技能系女性たちのドラマがヒット。その二大巨塔は『ドクターX』シリーズの米倉涼子と『科捜研の女』シリーズの沢口靖子である。「私、失敗しないので」「科学は嘘をつかない」。勝ち組女子は、決めセリフもきっぱりとしている。

 非正規雇用、セクハラ、パワハラ、さまざまな社会問題が話題になる中、ただ文句を言うだけでなく、自分の持つ力で道を切り開き、不当な圧力をかける相手をぎゃふんと言わせる。いわば社会問題を逆手にとったような形で「勝った」のが、『ごくせん』の仲間由紀恵、『ハケンの品格』の篠原涼子、『家売る女』の北川景子、『義母と娘のブルース』の綾瀬はるかなどである。

 また、過激な強さでは、最高視聴率40%を記録した『家政婦のミタ』の松嶋菜々子や『Missデビル 人事の悪魔・椿眞子』の菜々緒もいる。ヒロインが幸せな結末を迎えるのが「勝ち」だと思っていたが、この2作については任務遂行のみが「勝ち」に見える。どこか無機質な「勝ち」は、斬新であった。

 では、「負けた女」は誰か。目立ったのは、悪女ドラマだ。米倉涼子(2004年)、武井咲(2017年)が主演した『黒革の手帖』は、裏金を横領して夜の世界でのし上がる悪女には、最後は大きなワナが待っていた。野心むき出しの狡猾さと女としてのもろさと。あっと驚いた武井の「ハズキルーペ」CMも含め、悪女役が女優をタフにするというのもよくわかる。

 もう1つ話題になったのが、不倫ドラマ。『セカンドバージン』の鈴木京香は、年下の妻子持ちのやり手社長(長谷川博己)と熱烈な恋愛に突入。しかし、彼の妻(深田恭子)は離婚を断固拒否する。一方、自身も夫がいて、相手にも妻がいるといういわゆるW不倫の2人を描いて大きな反響を得たのが、上戸彩の『昼顔』だった。この作品でも相手(斎藤工)は妻と別れることはできず、切ない終わりを迎える。

 どちらのドラマもヒロインは恋しい男を「夫」にすることはできない。結婚が「勝ち」だとすれば「負け」である。だが、負けたからこそ、ドラマチック。この2作が映画化され、女優の代表作になったことを思うと、「負け」のほうが有利ともいえる。

 のんきなドラマがなかなか許されなくなった平成30年間。次の時代ものんきなドラマが成立することは難しいだろう。どんな女が「勝ち」「負け」るのか。そればっかりじゃ、ちょっと疲れる気もするけど。
 

関連記事

トピックス

鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《デートではお揃い服》お泊まり報道の永瀬廉と浜辺美波、「24時間テレビ」放送中に配慮が見られた“チャリT”のカラー問題
NEWSポストセブン
経済同友会の定例会見でサプリ購入を巡り警察の捜査を受けたことに関し、頭を下げる同会の新浪剛史代表幹事。9月3日(時事通信フォト)
《苦しい弁明》“違法薬物疑惑”のサントリー元会長・新浪剛史氏 臨床心理士が注目した会見での表情と“権威バイアス”
NEWSポストセブン
海外のアダルトサイトを通じてわいせつな行為をしているところを生配信したとして男女4人が逮捕された(海外サイトの公式サイトより)
《公然わいせつ容疑で男女4人逮捕》100人超える女性が在籍、“丸出し”配信を「黙認」した社長は高級マンションに会社登記を移して
NEWSポストセブン
2才の誕生日を迎えた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
【9月6日で19才に】悠仁さま、40年ぶりの成年式へ 御料牧場、小学校の行事、初海外のブータン、伊勢新宮をご参拝、部活動…歩まれてきた19年を振り返る 
女性セブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
「同棲していたのは小柄な彼女」大麻所持容疑の清水尋也容疑者“家賃15万円自宅アパート”緊迫のガサ当日「『ブーッ!』早朝、大きなクラクションが鳴った」《大家が証言》
NEWSポストセブン
当時の水原とのスタバでの交流について語ったボウヤー
「大谷翔平の名前で日本酒を売りたいんだ、どうかな」26億円を詐取した違法胴元・ボウヤーが明かす、当時の水原一平に迫っていた“大谷マネーへの触手”
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
《同居女性も容疑を認める》清水尋也容疑者(26)Hip-hopに支えられた「私生活」、関係者が語る“仕事と切り離したプライベートの顔”【大麻所持の疑いで逮捕】
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン
賭博の胴元・ボウヤーが暴露本を出版していた
大谷翔平から26億円を掠めた違法胴元・ボウヤーが“暴露本”を出版していた!「日本でも売りたい」“大谷と水原一平の真実”の章に書かれた意外な内容
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレ(時事通信フォト)
《メンバーの夫が顔面骨折の交通事故も》試練乗り越えてロコ・ソラーレがミラノ五輪日本代表決定戦に挑む、わずかなオフに過ごした「充実の夫婦時間」
NEWSポストセブン
サークル活動にも精を出しているという悠仁さま(写真/共同通信社)
悠仁さまの筑波大キャンパスライフ、上級生の間では「顔がかっこいい」と話題に バドミントンサークル内で呼ばれる“あだ名”とは
週刊ポスト
米カリフォルニア州のバーバンク警察は連続“尻嗅ぎ犯”を逮捕した(TikTokより)
《書店で女性のお尻を嗅ぐ動画が拡散》“連続尻嗅ぎ犯” クラウダー容疑者の卑劣な犯行【日本でも社会問題“触らない痴漢”】
NEWSポストセブン