三姉妹が登場するドラマの面白さと強みは、キャラクターにバリエーションでできること。三人それぞれに性格は違うし、人生もいろいろ。三人いれば、そのうち一人くらいは「こういう人、いるいる」と共感もされやすいし、パートナーとの出会い、別れ、こどもたちもことも含めて、話がにぎやかになる。肉親だけに姉妹が起こすトラブルもヒロインは無視できない。
『スカーレット』のようにオリジナルストーリーならば、なおさら自由自在だ。思えば、このドラマでは、地道な働き者のヒロインとまじめな三女の間にはさまれた次女直子が暴れん坊で少女時代は父親(北村一輝)と激突、おとなになるとヒョウ柄を愛用するおばちゃんキャラになってブイブイ言わせていた。デビュー当初の楚々としたイメージを蹴破った桜庭ななみの言動が、ドラマに躍動感をもたらしたといえる。
私は脚本家を取材する中で「話数の多い朝ドラは、キャラの立つ登場人物を多くしないとネタ切れになる」という話を聞いたことがある。確かに土曜の放送がなくなったとはいえ、ざっと120話ある朝ドラでヒロインに毎回人生の大事件が起こるというわけにもいかない。
そんなとき、仲良し姉妹は強い味方だ。『エール』の関内家三姉妹は、音の姉の吟(松井玲奈)はすてきな男性と幸せになりたいと願い、妹の梅(森七菜)は文学好きで小説家になることを夢見ている。主人公の裕一がぼんやりと気弱な人物だけに、これからは音がドラマをぐいぐい進めていきそうだ。そこに姉妹がどうからむか。新たな朝ドラ三姉妹伝説を作ってほしい。