その番宣番組の中で、もっとも驚かされたのは、短槍遣いの女用心棒役の綾瀬が特訓した殺陣に、“百獣の王”武井壮が挑戦する、という企画だった。
運動神経や身体能力において芸能界で一、二を争うほどの武井は、妄想という名のシミュレーションでは素手で何十頭もの猛獣を仕留めている。当然、殺陣も「スジがいい」「勘がいい」と誉められそうなものだが、実際に槍を手にした殺陣は全くうまくいかないし、早々に息があがってしまうのである。負けん気の強い武井は「もう一回」「もう一回」と挑戦するのだが、いいところが一つもないまま時間切れになってしまった。
一方、綾瀬に殺陣をコーチしたトレーナーによれば、意外にも彼女はひじょうに勘が良かったという。私たちが思っているように、コーチも日頃の綾瀬の役のイメージから「大丈夫だろうか」と不安を抱いたようだ。が、殺陣のシーンを作っていくとき、ほんの一瞬“間”が空くと、綾瀬は即座にアドリブを入れこみ、そのシーンを自分のものにしたというのである。トレーナーは目を細めながら、しかし、おおいに感心したという表情でエピソードを話してくれた。
『あさイチ』金曜日の「プレミアムトーク」や、『スタジオパークからこんにちは』、『土曜スタジオパーク』にドラマのキャストを招いては、視聴者からファクスで質問や似顔絵を募り、ファン目線で番組を作るのもNHKは得意中の得意。
民放の場合は、生活情報系や報道系の生番組と宣伝部の関係がそういいわけでもなく、番宣コーナーの時間は限られている。『あさイチ』や『スタジオパーク~』のようなレギュラー番組にドラマのキャストが出て来て、延々ドラマの話をするというのも、「いくらなんでも番宣に寄り過ぎてやしないか」と反対意見が出て、ドラマの話は極力少なく…ということになってしまうのだ。というのも、よほどの大物が出ない限り、いわゆる“電波ジャック”は視聴率の分計が下がってしまうからだ。
が、件のNHKの番組は、たとえば『あさが来た』直結で『あさイチ』にディーン・フジオカが出たり、近藤正臣が出たりしても、そのまま高視聴率を維持。25日の同・プレミアムトークは玉木宏で、冒頭から、有働由美子アナ、V6井ノ原快彦と玉木の3ショットでスタートした。
惣兵衛役の柄本佑が亡くなった回の直後で、有働アナはまた涙目。砂時計越しの新次郎(玉木)出演シーンに思うことがあった有働アナは、新次郎まで死んでしまうのではと動揺しながら、視聴者からのファクスを読むのである。これでは、8時15分になっても、民放にチャンネルを変えることはできないだろう(苦笑)。
それぞれのドラマや番組とが相乗効果となって話題が話題を呼ぶ…。NHKドラマ班、やはり、ノッている。