平日のドラマに米倉涼子さん、天海祐希さん、菅野美穂さん、吉田羊さんなど女性支持の高い実力派を起用しているのはその証拠であり、20代の若手でも化粧品のCMに出演するほど女性の好感度が高い新垣結衣さんや石原さとみさんがキャスティングされ、共感を誘おうとしているのです。
一方、土日のドラマに男優が多いのは、メインの女性層に加え、男性層、若者層、子ども層も取り込める休日だから。平日のドラマがヒット狙いだとしたら、土日のドラマはホームラン狙い。唐沢寿明さん、織田裕二さん、阿部寛さんなどの誰もが知っている大物男優がキャスティングされているのはそのためなのです。
色分けされた理由でもう1つ見逃せないのは、年を追うごとに女優の層が厚くなっていること。21世紀に入って以降、主演を務められる女優が増える一方、主演男優が減っているのです。前述したように、現在の連ドラは女性の支持を集めることが重要である上に、大きな影響を与えているのは朝ドラ。かつての絶大な影響力を取り戻したことで、有村架純さんや波瑠さんなどの新たなスター女優を生み出し、杏さんや吉高由里子さんなどの人気を盤石のものにしました。
朝ドラの好調が続くほど“主演女優=国民的女優”のような存在が増え、新たな主演男優が生まれにくくなっていくのです。秋ドラマには、20代男優の筆頭格である窪田正孝さんと菅田将暉さんが2番手のポジションで出演しますが、これは制作サイドが「主演を張るにはもう少し実績が必要」とみなしているからでしょう。
本来、女優のほうがさまざまなジャンルのCMやイベントに出演しやすいなど、知名度を高めるチャンスには恵まれているところがあります。ただ、その反面、恋愛・結婚が人気に影響し、妊娠・出産・育児で仕事をセーブせざるをえないなどの難しさもあり、チャンスとピンチは紙一重。その狭間で奮闘しているからこそ、より輝いて美しく見えるし、女性からの支持を集められる、とも言えます。
実は1クール前の夏ドラマでも、「平日は女優、土日は男優」に近い現象が見られましたし、2期続いたことで、いよいよこの流れが加速していくものと思われます。
視聴者の一人としては、制作サイドが「もっと男性が見たくなる」平日のドラマを作る必要性を感じますし、主演を務められる男優も増えてほしいところですが、しばらく女優優勢の流れは避けられないでしょう。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。