以降、平成4年(1992年)は朝ドラ『ひらり』の主題歌『晴れたらいいね』を歌ったドリームズ・カム・トゥルー、ラストステージのチェッカーズ、コンドームパフォーマンスの本木雅弘などが話題を呼んで55.2%、平成10年(1998年)は安室奈美恵の復帰ステージ、初のミリオンセラー『夜空ノムコウ』を披露したSMAP、途中からマイクを通じてではなく地声で歌った和田アキ子などが視聴者の目を引き付けて57.2%を記録。平成11年(1999年)までは50%台を保っていく。
視聴率の安定していた紅白に、再び危機が訪れる。平成12年(2000年)48.4%と11年ぶりに40%台に下がると、4年後には39.3%と初の30%台に突入。この年の視聴率年間1位だったが、メディアはこんな見出しをつけた。
〈NHK「紅白」39.3% 海老沢会長窮地、「史上最高」のはずが視聴率史上最低〉(スポーツニッポン・平成17年1月3日付)
〈NHK「紅白歌合戦」史上最悪視聴率39.3% K-1は20.1%〉(スポーツ報知・平成17年1月3日付)
この年以降、ネットテレビやSNS、スマートフォンなど地上波テレビのライバルが激増していく流れを考えれば、さらに視聴率が下がってもおかしくなかった。しかし、“平成後半の紅白歌合戦”は毎年40%前後に踏みとどまっている。『テレビ離れ』が叫ばれる中で、実に驚異的なことである。
総世帯視聴率(HUT、調査対象の中でテレビを付けている世帯の割合)と比べると、凄さがわかりやすい。
【年/ゴールデンタイムの年間HUT/紅白視聴率】
・平成16年(2004年)/67.9%/39.3%
・平成23年(2011年)/63.9%/41.6%
・平成30年(2018年)/60.6%/41.5%
平成16年と30年で、ゴールデンタイムの年間HUTは7.3%減少するも、紅白は2.2%増加しているのだ。
なぜ、平成後半も紅白は40%前後の高視聴率を保てたのだろうか。島会長が指摘していた〈マンネリ〉の良い部分を残しながらも、毎年のようにサプライズを仕掛け、従来のNHKの慣習を少しでも打ち破ろうとする演出側の挑戦が見逃せない。