平成16年に初の30%台に落ちると、それまで4年連続で続けてきた局アナだけの司会を辞め、平成17年はみのもんたを抜擢。過去にも古舘伊知郎や上沼恵美子など民放の人気司会者の起用はあったが、彼らはNHKでレギュラー番組を持っていた。しかし、『みのもんたの朝ズバッ!』(TBS系)、昼の『午後は○○おもいッきりテレビ』(日本テレビ系)など民放でレギュラー番組9本を持っていた超売れっ子も、衛星放送を除けばNHKでの司会は初。その効果もあってか、この年は42.9%と数字を戻す。

 平成22年(2010年)以降、NHK連続テレビ小説(朝ドラ)出演者がほとんど毎年、司会に名を連ねていることも大きな変化の1つだ。過去にも昭和40年の林美智子、昭和61年の斉藤由貴、平成4年、5年の石田ひかりと朝ドラヒロインを抜擢していたが、今ではもはや定番となっている。司会者だけには留まらず、平成25年の『あまちゃん』のように朝ドラコーナーも組み込まれている。

 平成27年(2015年)には、タモリとマツコ・デラックスという大物タレントを審査員ではなく、中継で繋いだ。平成29年の欅坂46、平成30年のDA PUMPの歌唱時には、司会の内村光良が一緒に踊った……。挙げれば切りがないほど、毎年新しい演出を試みている。

 昭和の頃ならタブー視されたこともあるだろうし、「NHKらしくない」「自局の宣伝ばかり」という批判も浴びている。公共放送であるNHKが視聴率を狙い過ぎという指摘も見受けられる。

 他番組はさておき、紅白に関しては昭和から年間1位を続け、平成になって1位から陥落した年もあったものの、上位に残り続けている歴史を考えれば、今さら視聴率を完全に無視した構成にすることはないだろう。

 むしろ、視聴率を気にしたからこそ、“平成の紅白歌合戦”は芸能界やテレビ界、視聴者の変化そのものを現し、日本のテレビ番組における象徴的な存在となったのではないか。

 振り返れば、平成初期の島会長の〈マンネリ化は困る〉という精神は、今も紅白演出の根底にあるように感じる。昭和から続く良い慣習を残しながら、時代に合わせたアレンジを加えて生き延びた紅白歌合戦。令和になっても進化を続けるか。

●文/岡野誠:ライター・芸能研究家。研究分野は松木安太郎、生島ヒロシ、視聴率、プロ野球選手名鑑など。最近は角川博チェックにも余念がない。本人へのインタビューや関係者への取材、膨大な資料の緻密な読解を通して、田原俊彦という生き方を描いた著書『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)が話題に。

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン